藻岩山麓・円山 | ||
藻岩山、円山は札幌市街の西側に位置する山々で、大正10年には円山・藻岩原生林が天然記念物に指定されるなど豊かな自然を継承している。両者とも整備された自然歩道があり休日はハイキングする人達で賑わっている。 山麓には高級住宅地や緑につつまれた公園など閑静な雰囲気に加え、緩やかな曲線で2つの山麓を繋いだ藻岩山麓通りには、ちょっと洒落たお店が立ち並び、整然と区画整理された札幌の市街地とは一風変わった風景となる。小樽に匹敵する坂の街で、後に紹介する伏見稲荷からちざきバラ園へのルートも息も切れる急坂である。ほぼ並行するように藻岩山登山道があるのだから無理もない。車を使うときはパーキングブレーキのチェックをお忘れなく。 |
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藻岩山 (地図) | ||
藻岩山 展望台からの風景 |
藻岩山 山頂碑とレピーターアンテナ |
藻岩山 登山道(慈啓会ルート) |
その昔、アイヌの人達が藻岩山を「インカルシペ(いつも眺めるところ)」と呼んだように、藻岩山の山頂展望台からは南の札幌ドームから北の石狩湾まで拡がる札幌市街や、晴れた日には恵庭岳や四角く角張った山頂が特徴的な神威岳、アンテナ塔の立ち並ぶ手稲山など360度の眺望が可能である。ロープウェイや観光自動車道が整備されていてアクセスも容易。夜景の名所でもある。 | 山頂を示す碑とその向こうにそびえるアンテナ塔。開発された山頂らしい風景が拡がる。山頂展望台には登山者用の休憩所もあり、歩いて登ると景色もまた違って見えてくる。登山口は駐車場が整備された旭山記念公園と慈啓会病院の他に小林峠、北の沢、市民スキー場入口がある。次に紹介する慈啓会ルートから外れると、急に人が少なくなるので熊鈴を用意したほうが無難。 | 藻岩山登山で最も人気の高い慈啓会ルートは、渓谷沿いの森林を代表するカツラ林の中を通る気持ちの良い自然歩道。山頂までは約1時間。駐車スペースはすぐ満車になるので、早い出発を薦める。万一満車でも旭山記念公園ルートなどは比較的空いている。一帯は後に紹介する円山と同様に天然記念物指定区域となっているので動植物の採取はしないよう心がけて欲しい。 |
藻岩山麓・伏見界隈 (地図) | ||
ろいず珈琲館 旧小熊邱 |
ろいず珈琲館 旧小熊邱テラス |
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昭和2年、北海道帝国大学農学部の小熊捍博士(Dr.Mamoru Oguma)邱として、札幌市南1条西20丁目に建てられた洋館。平成10年に藻岩山ロープウェイの乗り場近くに移築され喫茶店として使われている。 | 少し高台にある旧小熊邱のテラスからは札幌の町並みが木々越しに見え、ちょっと豪華なコーヒータイムが楽しめる。 | |
伏見稲荷神社 稲荷鳥居 |
伏見稲荷神社 本殿 |
ちざきバラ園 空中庭園?! |
藻岩山麓通りから続く稲荷鳥居。お稲荷さんというと、朱の鳥居をベースに笠木と根巻に黒のアクセントというのが一般的なようだがここは手前の一本を除き朱一色が特徴。車などで本殿横の道路からも入れる(狭い)が、ちゃんと正面からお参りしたい。 | 伏見稲荷神社は明治17年に京都伏見稲荷神社の分神を南5条東1丁目に祭ったのが起源。明治31年には琴似村十二軒(現・西区山の手)、そして明治40年に今の藻岩山麓に移設された。現在の伏見という地名も京都本宮に準えたものである。本殿のまわりはひっそりしていて神聖な雰囲気が感じられる。 | 標高93mの高台に作られた庭園は札幌市街が一望できる開放感あふれる庭園。昭和42年に地崎宇三郎氏の個人庭園として完成し、昭和45年から一般公開されている。5500坪の園内には開花時期の異なる400種類のバラが植えられており、6月から10月までバラの花を堪能できる。 |
ちざきバラ園 初夏の大きな木陰 |
旭山記念公園 | |
ちざきバラ園まではかなりの急坂だが自分の足で登りきり木陰で一息つく。併設のカフェローズでローズソフトクリームなど買って来て、食べながら花壇と札幌を見渡すのが、なんとも気持ちがいい初夏のひととき。 | 札幌市創建100年を記念して昭和45年に作られ公園。藻岩・円山のちょうど中間ぐらいの高台にある。終日利用可能だが、駐車場までの車両ゲートは6時〜22時まで開門。夏の夜景シーズンは22時以降も多くの人が訪れ、駐車場から溢れた車で路上駐車の列が途切れることがない。 | |
円山自然歩道、円山公園 (地図) | ||
円山自然歩道 八十八ヶ所入口 |
円山自然歩道 カツラの巨木 |
円山自然歩道 山頂と山神碑 |
円山の最も一般的な登山口。本家と比べるとかなり規模が小さいが四国八十八ヶ所にちなんだ八十八体の観音様めぐりもできる。脚力に自身のない方でも案内図の裏手にストックが用意されているので安心。借りていくことを薦める。街中の小山なので熊は生息していない。 | 円山原始林として大正10年に天然記念物に指定された円山の魅力は随所に見られるカツラの巨木。その大きさは見上げる程に感激する。190万都市札幌の只中に、このような環境が残ってることをありがたく思う。 | 登山道を登ること約30分。かつて円山が採石場だったころ、石工たちが自然石に「山神」と刻んで祀った石碑が見えてくるともうすぐ山頂。石碑は今でも登山者の安全を見守りつづけている。 |
円山自然歩道 山頂からの眺望 |
円山自然歩道 奥の院 |
円山公園(原始林傍) 木道(動物園〜八十八ヶ所入口) |
山頂の周囲は採石場時代の名残かゴツゴツとした岩場になっている。標高226mと数字的にはあまり高くはないが、テレビ塔より100m高い山頂からは、街を行く車や人が豆粒のように見える。下りは動物園側ルートを通ることで円山を一周できる。 | 下りルートで目に付くのは奉安殿のような祠。台座の彫刻文字はいたずらで大半が消えているが「大正*年五月高野山 **千百年記念造営・・」と判読でき、大正14年の高野山開創1100年記念を差すと思われる。近くに高野山北海道別院隆光寺があるが、同寺の奥の院なのかは不明。 | 円山動物園の裏手を抜けて下山すると八十八ヶ所入口までは木道が整備されている。疲れた脚にはありがたい存在だが、ここはもうちょっと我慢して小川を挟んだ対岸の自然歩道を歩いてみよう。このあたりはエゾシマリスやエゾリスが頻繁に顔をみせてくれる。 |
円山自然歩道 エゾシマリス |
円山自然歩道 エゾリス |
円山公園(原始林傍) 山下秀之助歌碑 |
エゾシマリスは本州にいるシベリアシマリスの亜種で北海道全域に生息している。円山自然歩道ではカツラの巨木の洞を巣にしているらしく、周囲を活発に動き回る姿が頻繁に見られる。 | エゾリスはキタリスの日本固有亜種で北海道にしか生息していない。20cm強の体長はシマリスよりも一回り大きい。彼らもカツラの巨木を拠点としているようだ。大柄で動きが速いのでカメラにおさめるのに苦労する。 | 山下秀之助はかつての札幌鉄道病院長で歌集「冬日」等により北海道文化賞を受賞した人物。還暦祝いに自筆の歌を記念碑として製作されたもの。付近には「殉難消防員の碑」や、「北海道方面委員慰霊碑」などの慰霊碑が立ち並ぶ。 |
北海道神宮 (地図) | ||
北海道神宮 本殿 |
北海道神宮 本殿横 |
樺太開拓記念碑 |
明治2年、明治天皇の命により北海道開拓の守護神として祭られたのが始まり。明治4年には札幌神社として社名が決まり、この地に社殿が置かれた。昭和39年に開拓の神々と共に明治天皇自身も祭られ、その気に北海道神宮と改称された。 | 一面に敷かれた砂が神聖な雰囲気を持つ拝殿横。鬼門・裏鬼門には砂を撒いて清めると言うが...神の国というのが実在するならば、こんな感じなのかも知れない。 | 公園口からの参道、開拓神社の裏手にひっそりと建つ樺太開拓記念碑。こうして記念碑を目の前にすると、現在は異国の地である樺太に日本人が入植したのが史実だということを改めて感じる。 |
北海道神宮末社 開拓神社 |
北海道神宮末社 札幌鑛霊神社 |
北海道神宮末社 穂多木神社 |
北海道開道70周年にあたり37名の開拓功労者を祭った神社として置かれた開拓神社。蝦夷地を北海道と改称した8月15日に例祭が行われる。 | かつては石炭産出に涌いた北海道にあって、鉱業に従事し、その発展に貢献した殉職者が祭られている札幌鉱霊神社。北海道最後の炭鉱である太平洋炭礦が閉山となった今も鉱業の安全と発展を祈願している。 | 北海道拓殖銀行の功労者が祭られている風変わりな神社。拓殖事業に資本提供する特殊銀行として誕生した拓銀の本店に置かれていたものが、昭和25年に普通銀行への転換を期に北海道神宮の境内に置かれたもの。 |
参考文献:広報さっぽろ2002年8月(中央区版)、広報さっぽろ2001年2月(西区版)、北海道の森と湿原をあるく(寿郎社発行)、札幌市環境局みどりの推進部みどりのページ |