琴似の歴史 | ||
明治7年に設けられた「屯田兵例則」に伴い、同年11月に琴似に208戸の兵屋が建設され、翌年5月に北海道初の屯田兵が琴似に入植した。兵屋は幅員10間(約18m)の中央通り(現在の琴似本通)を中心に立ち並び、現在の琴似の街並みの基礎ともなる南北195間(約355m)、東西222間(約400m)の一大兵屋街を形成した。明治13年札幌−手宮間の鉄道開通に伴い琴似に停車場が作られると、琴似本通りは駅前通りとして機能し、現代とそっくりな街並みが生まれることになる。 現在の琴似は琴似本通りに沿って商店街が賑やかに立ち並び、琴似発寒川周辺には静かな住宅街が形成されている。管理人の居住地もその一角にある。 |
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国指定史跡「琴似屯田兵村兵屋跡」 (地図) | ||
琴似屯田兵屋跡 (琴似2条5丁目) |
琴似屯田兵屋跡 史跡の石碑 |
琴似屯田兵屋跡 土間より部屋を覗く |
地下鉄琴似駅から近い裏通りには琴似屯田兵屋跡が保存されている。兵屋は残念ながら、建造当時のものではなく、昭和47年に兵屋番号133番(かつての屯田兵・清野専次郎が入居したもの)を復元したもの。後に紹介する琴似神社の兵屋は当時の建造物として文化財に指定されているのに対し、こちらは当時の場所に当時の間取り・構成をそのまま再現した事に意味がある史跡。 | 同屯田兵屋は昭和57年に国指定史跡に指定され、庭先にはそれを示す石碑が建っている。石碑の傍にはベンチもあり、夏の晴れた日は懐かしい感じのする建屋を見ながら、のんびりするのもいいかもしれない。 | 内部の間取りは、入口には土間、土間の正面には板張りの居間、その奥左側に8畳間、右側壁の奥には4.5畳間がある。1家族が住むには現在から見ると貧弱な間取りだが、当時としては十分な広さを持った住宅。しかし、防寒装備は見るからに乏しく、当時の越冬の厳しさを物語っている。 |
琴似神社周辺 (地図) | ||
琴似神社 (琴似1条7丁目) |
琴似神社 社殿 |
琴似屯田兵屋 |
仙台藩、亘理(亘理郡亘理町)の領主、伊達邦成の祖先である伊達安房成実(政宗の重臣)が奉られている神社。琴似屯田兵となった亘理武士達が主君の祖先を奉ったのが始まりとか。屯田兵発足前より、亘理出身の武士達は現在の北海道伊達市に多く移住し北海道開発の礎となった。 | 普段はひっそりとしている社殿。年に二回ある例祭の時は参拝の人々で賑わいをみせる。春季例祭は琴似屯田兵の入植完了日を記念したもので5月27日に、秋季例祭は明治天皇の琴似屯田巡視を記念したもので9月4日に行われる。 | 琴似神社の敷地内にある屯田兵屋は兵屋番号140番佐藤喜一郎が入居したものだが、こちらは「琴似屯田兵屋跡」の兵屋とは違い、当時のものを改修した本物。この兵屋は建造当時は、現在の琴似1条5丁目にあったものが、昭和38年に神社に奉納され現在の場所に移設された経緯を持つ。 |
琴似屯田兵屋 土間より部屋を覗く |
琴似屯田授産場跡の碑 |
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入るとちょっと埃臭く感じる土間にはかつて使われた道具が展示され、居間にはいろり、奥には明治天皇の掛軸がかけられ、かつての屯田兵の暮らしぶりが何となくではあるが伺える。 | 神社の境内は開拓時代には屯田授産場があり、北海道の新たな産業を模索するべく養蚕が行われていた・・・らしい。 | |
琴似神社境内 奉安殿? |
屯田の森(西区役所内) 琴似屯田記念碑群 |
西区役所横の大欅 |
奉安殿とは戦前の学校に天皇・皇后の写真と教育勅語を安置させ、日々の敬礼や、国家四大祝祭日の儀式を通し、主権天皇を浸透させる目的で設置されたもの。立地関係から、琴似小学校にあったものと推測できるが、奉安殿の多くはGHQにより破却させられていることから、本物であれば歴史的にも貴重な施設である。近年扉が従来の緑扉から新しくされた。 | 琴似屯田記念碑群は琴似の各地に点在していた琴似屯田に関する記念碑を西区役所内の「屯田の森」の整備に合わせて移設されたもの。右から「琴似屯田百年記念碑」、「陸軍屯田兵第一大隊第一中隊本部の証」、「記念碑(通称:琴似屯田開村記念碑)」、「屯田兵本部趾」、「琴似屯田兵顕彰碑」。 | 西区役所南側の通りを分断するように存在する樹齢100年を超える大欅。かつての琴似小学校正門横に植えられていたものが、学校が移転した後も、変わらずこの地に根づいている。界隈にはラーメンで有名な「山桜桃」もある。 |
琴似発寒川周辺 (地図) | ||
琴似発寒川河川標 と北欧館 |
発寒河畔公園 |
発寒河畔公園 川面 |
旧国道5号線の発寒河畔公園の入口に大きく目立つ河川標。奥が琴似、手前が発寒、琴似側にはちょっと珍しいパンの博物館「北欧館」がある。パンの歴史などの展示の他、レストランではパン・サラダ・スープなどのパン・バイキングが楽しめる。 | 琴似発寒川沿いを幾つもの公園が点在している発寒河畔公園。春には梅、エゾヤマザクラ、ライラックなどの花が楽しめる公園。特に花見時期にはあちこちから人が集まり、至る所からジンギスカンの煙が漂ってくる。 | 公園内の川は比較的整備された川ではあるが、時折木々の隙間からみせる川面は水もきれいで自然そのもの。とある晴れた日に、水面に木々や青空が写り込み、違った一面をみせてくれた。 |
琴似発寒川 鴨のカップル |
琴似発寒川より 琴似市街を望む |
昔懐かしい 木製の電柱 |
琴似発寒川は野鳥も豊富。水鳥に人気で鴨や鷺、かもめなどが頻繁に訪れる。堤防は階段状で穏やかな流れの日は川に入ることもできるが場所によって急に深くなるので要注意(管理人はこのせいで川に落ちた)。 | 市街を一通り散策したら、北欧館あたりから川沿いに北へ散策するのがお薦め。右手彼方に琴似の街が見え、「こうやって見ると、琴似の街って大きいんだな」と改めて感じる瞬間。 | 琴似の街によく似合う昔懐かしい木製電柱。琴似発寒川界隈の住宅街の中に2本立っているが、何れも街灯電柱として未だ現役である。 |
JR琴似駅周辺 (地図) | ||
琴似の新名所? ヴェルビュタワー |
函館本線 琴似発寒川橋梁 |
農試公園 |
JR琴似駅前に登場した30階建のマンションがヴェルビュタワー。最初に見たときは、「琴似にこんな大きな建物なんていらん」と思ったが、今ではこの建物が見えると「琴似に帰ってきたな」という気がする。一階と二階は店舗になっていて、JR琴似駅からイトーヨーカドー、琴似3・1ビルを経由してコルテナTまで空中歩廊として結ばれている。 | JR函館本線の琴似発寒川にかかる橋梁近く。列車ウォッチングをするには最適の場所。この区間は特急の営業運転はないが、北斗星、カシオペア、トワイライトエクスプレス、スーパー北斗・とかち・おおぞら等々、手稲車両区への回送車両も多く通る。 | JR函館本線北側の琴似発寒川沿いに、かつての農林省北海道農事試験場が農試公園と名を変え、川沿いの地形を巧みに利用した公園となっている。ソメイヨシノや八重桜など花見の他、一直線に並ぶポプラ並木など隠れた名所もある。水遊びのできるちゃぷちゃぷ広場や、木工遊びができるトンカチ広場、教習所のような模擬コースを貸自転車で走る交通コーナーなどいつも子供達で賑わっている。 |
農試公園に保存されるD51 |
炭火焙煎工房 サッポロ珈琲館本店 |
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農試公園にあるD51は11番機。北海道では岩見沢機関区に長く所属、函館本線、室蘭本線で活躍した。公園内で静態保存されている。錆が目立ち少々可哀想な状態であったが、最近お色直しをして若干見映えがするようになった。 | 大正時代建造の北海道工業試験場を改装した喫茶店。建物の印象から暗めの店内を連想するが、実際には明るく落ち着く店内。販売コーナーやフリースペースなどもあり地域の交流の場でもある。住所的には八軒になるが、JR琴似駅からは歩いて数分、住宅街の一角にある。 | |
参考文献:国指定史跡「琴似屯田兵村兵屋跡」パンフレット(札幌市)、'99〜'00るるぶ北海道(JTB発行)、札幌cafe本(コスモメディア発行)、近代建築ホームページ〜奉安殿を訪ねて〜 |