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ウペペサンケ山(西峰) ~大雪山屈指の展望台~

稜線好きとしては、初めての東大雪はウペペサンケしかないだろうということで、行ってきました。前日は糠平温泉湯元館に泊り、朝6時30分に出発。温泉街からは林道を20分ほど走ると登山口に到着。鬱蒼とした林の中からスタートすると、いきなりの笹薮漕ぎに倒木ありのバラエティに富んだコース。それらの障害をクリアしつつ1399mピークに着き、更に進んで行くと、これまでの障害が取るに足らないものであったことに気付かされる。1399mピーク手前では、本峰まで行くと言っていたパーティに「山頂で会いましょう」と声を掛けて抜いたものの、後から聞いた話では、メンバーの一人が遅れて糠平富士(ウぺぺサンケ東峰)で引き返したそうで、それほど今日のこの山は辛かった。

1399mピークからは一旦コルに下りて1595mピークまで登って行くが、この登りが曲者だった。今までの笹薮漕ぎは序の口とばかりに、生い茂った熊笹に進むべき道はすっかり覆い隠されている。勾配はそれほど急ではないが、薮を掻き分けて進まなければならないので体力を消耗する。高度計と地図が無ければ自分の位置なんて全くわからない。延々続く笹薮にキレかけた頃、標高1500mに達して植生が一変する。今度はハイマツ漕ぎに変わった(^^;。何がハイマツだ。そんな奥床しいものじゃなくて、私の背丈を越えて真直ぐ伸びている。熊笹よりも枝が固く、登っては押し戻され、「何くそ!」とパワーで乗り切る。1595mピークに着くと図根点というのがあった。素人には三角点と違いがわからないが、測量点の一種で数が少なくて珍しいらしい。しかしながら、同じ人口の建造物でも四角い石の塊よりもダムが湛える糠平湖の眺望の方が美しい。

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ここまで来ると視界が開けてウぺぺサンケの山容も見え稜線らしくなった・・・と思ったが、全然そんなことはなく、ハイマツのブッシュの中を進んでいく。顔にはトゲが、足には根が、手には松ヤニが...容赦のないハイマツ攻撃。菅野温泉分岐を過ぎるとようやくハイマツが衰えを見せはじめる。ここぞとばかりにスパートをかけるが、敵もさる者、所々でジャブを連発してくる。まぁ、そんなわけでフラフラになりながら、ウペペサンケ東峰、通称糠平富士に到着した。ニペソツ山は見えるが構図的に今ひとつ。やはり景色では先人のブログでも紹介されていたように、西峰に適うものはないかなぁと思う。

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少し休憩して本峰に向かう。ここからは本当に稜線らしい稜線が続く。痩せ尾根だが恐怖感を覚えるほどでもない。時折ハイマツのジャブが入るが、美しいニペソツの山容や遠くに見える十勝岳連峰、トムラウシ山などの稜線を見ていると、そんなものはダメージにすらならない。途中70mぐらい一気に標高を下げて登り返すが、この標高差のほうがダメージが大きかった。で、本峰着。糠平湖が見えなくなって、然別湖が見え始めたが、眺望は糠平富士と大した差はない。

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やはり西峰かと進むべき道を見てみるがまぁ遠いこと。しかしながら、先人のブログではそんなに時間は掛らないとのことで、その言葉を信じて進んで行く。やぁ、確かに思ったよりも楽な稜線。15分ほどで西峰に到着。そして圧巻の風景。先週縦走を断念したShokanさんが今日リベンジすると言っていた富良野~上ホロの稜線、今年の夏休みに大変な思いをして縦走したオプタテからトムラウシの稜線、そしてそこから続く化雲岳と五色岳、忠別岳までがはっきりと見える。

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ニペソツは登ったことはないがとにかく美しい。きっとこの山もトムラウシと同じで、登るよりも周りから眺める山なんだろうなと思う。この場所はとにかく素晴らしい。北にニペソツ、南に然別湖、西に十勝岳連峰、東にウペペの稜線、360°の景色が堪能できる。昨年登った平山の展望も良かったが、こんなに360°の景色を堪能できるのは大雪山では他にはないんじゃないかと思う。

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ここで「世界の名峰」みたく番組が終わって、一気に下界に連れて行って来れるとありがたいが、まぁ、そんな都合の良い話は当然なくて、景色を堪能した後は地道にブッシュと薮漕ぎの道を戻っていく。本峰で会った帯広の青年と、おっちゃん3人パーティ、御年配の夫婦と似たようなペースで下山して行く。中でも、一番頑張ったのは御年配夫婦で、休憩すると動けなくなりそうだと言ってずっと休憩なしで下山されていた。結局、下山したのは15:30ぐらい。ブログ等々見ていても、この山、みんな6時台に出発していて、地形と距離的に表大雪だとか十勝岳連峰とかなら8時スタートでも楽勝な感じなのに何故だろうと思っていたが、実際に歩いてみてその理由が良くわかった。まぁ、一言で言ってしまうと、「最高の山だが、最低なコース」だと言うことか。下山後は糠平温泉で汗を流し、十勝三股の三股山荘で食事をした後、長い長い帰路についた。


糠平コース登山口(7:00)→1399mピーク(8:05)→1595mピーク(8:55)→菅野温泉東コース分岐(9:15)→ウペペサンケ山東峰糠平富士(10:00)→ウペペサンケ山本峰(10:50)→ウペペサンケ山西峰(11:04←昼食→11:55)→ウペペサンケ山本峰(12:15←Teatime→12:30)→ウペペサンケ山東峰糠平富士(13:00)→菅野温泉東コース分岐(13:30)→1595mピーク(13:45)→1399mピーク(14:40)→糠平コース登山口(15:35)


今回のあこの燃費:13.8km/L
行きは道東道経由だったので、帰りは十勝三股の三股山荘で食事をして、三国峠経由で帰った。結果的に札幌から糠平までなら、[道東道もみじ山・十勝清水・上士幌経由]よりも、[三国峠・層雲峡経由・紋別道・道央道]のほうが早くて距離的にも近いことが判明。もう、「もみじ山ルートなんて行かないぞ」と心に誓った。

P.S. 帰ってから、ウペペコース最終水場の水で御飯を炊いた。うまい! お茶も作ってみた。美味。

上フ通信 ~雲の中ナキウサギ求めて三峰山~

今週末は大気の状態が不安定。朝起きて十勝岳ライブカメラを確認。視界良好。まぁ、行ってみるかと軽い気持ちで出発。三笠ICで旭川方面に向かう札幌山岳ガイドセンターの1BOX車を発見。先週、御世話になったガイドさんもいるかなぁと思いつつ、私とあこは三笠ICを下り富良野方面へ。登山口の凌雲閣前から見上げると、そこまで状態は悪くなさそう。というわけで、凌雲閣を10時に出発。入林届を見てみると登っている人も結構いるようだ。安政火口までのルートはエゾオヤマリンドウがちょうど見頃、三段山へのルートはまだ閉鎖されている。ガスが掛かっているが視界は良く、涼しくて気持ちが良い。安政火口の分岐を過ぎると山裾をグルッと巻いて上ホロ分岐へ。途中のウラジロナナカマドは赤い実を付けていた。

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上ホロ分岐からは上ホロカメットク山方面へ、そして名物の300階段。風に乗って熊の匂いがしてきたので、笛を吹きつつ一気に上がるとD尾根の少し手前で士別から来た3人パーティに追い付いた。稜線にも人が歩いているのが結構見える。ハイマツの緑も美しい。D尾根の終わりからグルッと右に巻いて登っていくともう上富良野岳山頂。雨がポツポツ降ってきているが、視界は良く十勝岳までクッキリと見えている。どうしようかと迷いつつ上富良野岳で昼食にする。山頂は8人パーティで賑やかだ。

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そうこうしているウチに青空も見えてきた。ここで、青森からきたおっちゃんと合流。同じ方向に行くというので、私も予定通り三峰山まで行くことにする。三峰山まではピークを2つ越えるが勾配は緩やかなので楽しい稜線歩き。晴れたり曇ったりしつつ三峰山に到着。しばらくナキウサギタイム、岩場でナキウサギの観察をする。おっちゃんと一緒にナキウサギ探しして2匹発見。少し遠いが最大望遠で撮影。可愛い。

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天気も良くなってきたので、そのまま一周ルートを進むことにする。隣の1860mピークでもまたナキウサギ観察。こちらはすぐ近くで2匹が見れたが、逃げられて撮影チャンスを逃した。少し残念だったが、間近で見れただけでも良いかということで尾根を進んでいく。富良野岳のコルの手前の巨岩帯では富良野岳がきれいに顔を出す。

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ここを抜けると富良野岳分岐はすぐ。そして延々続くトラバースの下山ルート。もくもくと歩いていると雨が到来。よくぞここまで天気も持ってくれた。雨具を来たとはいえビショ濡れで下山し、凌雲閣で汗を流した後は駐車場でお茶したり、内地から来たライダーや宮崎から来たおばちゃんと話をしたりして時間があっと言う間に時間が過ぎていった。下山してから2時間が過ぎようとした頃、山頂を見上げると三峰山から富良野岳にかけて、稜線の向こう側の雲海からあふれた霧が滝のように落ちていた。

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十勝岳温泉凌雲閣(10:00)→安政火口分岐(10:25)→上ホロ分岐(10:40)→上富良野岳(11:40←昼食→12:00)→三峰山(12:45←ナキウサギタイム→13:15)→富良野岳分岐(14:05)→上ホロ分岐(14:55)→十勝岳温泉凌雲閣(15:40)


今回のあこの燃費:12.7km/L

黒岳通信(2日目) ~桂月岳御来光と愛別岳アタック失敗~

朝2時54分。誰かに「時間ですよ!」と耳元で声を掛けられて起床。というか誰も声を掛けてはいない様子。そもそも、いつものように耳栓をして周りの人の気配すら感じずにぐっすりと眠っていたのに、よほどの大声でなければ声で目覚めるなんてありえない。不思議に思いつつも、まぁ「山ではこんなことは良くあるさ」と星の写真でも撮ろうと起き出す。石室前のテーブルには、もう既に桂月岳御来光の準備をしている人達もポツポツと。石室の屋根ごしにはオリオン座が登ってきているのが確認できる。夏でも、明け方近くであれば東の空に見られるようだ。

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3時30分、御年配が起き出してくる。そろそろ準備して行きますかとyah氏を起こしにかかる。去年は酒を飲んで桂月の御来光を逃したが、今年は謎の声のおかげもあって、かなり飲んだにも関わらずスッキリと目覚めた。が、しかし、yah氏は寝ついたところらしく中々起きない。私も耳栓を使い出すまでは、テントや山小屋で眠れなくて苦労した覚えがあるだけに、悪いなぁと思ったが、ここで起こさなければ御来光を逃した後悔のほうが大きいだろうと思い、心を鬼にして強く身体を揺すると何やら反応が...「時間ですよ。そろそろ行きましょう」と声を掛けるとガバッと起きてくる。しばらく固まっていたが、状況を理解したようで準備を始める。暗闇の中の登山は私自身も始めてで、ライトの調整等々色々と試しながら登っていく。LEDライトは全体的にぼんやりと明るいが地面の凹凸がはっきりしなくて歩きにくい。結果的には、電球のスポットライトのほうが凹凸がわかって歩きやすかった。そんなわけで無事に山頂に、既に多くの人がスタンバイしている。

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私も桂月岳で最も高いと思われる岩の上に腰を落ち着ける。寒いかと思ったが、上半身は下着の上にシャツ、フリース、ダウン、アウターの5枚重ね、下半身はパンツの上に雨具、スパッツと持ってきたものをすべて着ただけのことはあってすこぶる快適。待つこと約30分、武利岳の左側の稜線から朝日が登り始める。最大望遠で朝日を捉える。うーん美しい。今まで「御来光なんて」と思っていたが、こうやって実際に見てみるとわざわざ見に行く人の気持ちが理解できる。太陽が完全に稜線の上に出ると横長の楕円形に見える。大気の影響で真円には見えない。縦アングルで撮ってみて花札みたいだとか、いや花札は月だろうと御年配にツッコミをくらったりと楽しく時間が過ぎていく。

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その後は御年配は旭岳縦走、yah氏は御鉢平一周、私は愛別岳アタックと思い思いに別れて出発。yah氏とはここで別れ、御年配とは北鎮岳まで一緒に行く。北鎮岳の雪渓の手前では一回チャレンジして引き返してきたカップルのパーティがいる。少し休憩した後、御年配は直登、私はトラバース気味に思い思いのルートで雪渓を登っていく。気温が低かったこともあって雪が固い。ストックで雪を掘り起し、足場を確保して進んでいく。ストックは、キャップを外して90cm弱まで短くしている。傾斜が急だとこのほうが楽だ。しかし、時間のかかること。斜度が緩くなると三点確保で登っていく。カップルパーティも私の足場を使って登ってきている。全員無事に登れそうだ。

北鎮岳で2日間共に過ごした御年配と別れて愛別岳へ向かう。まだ、朝も早い裏ルートということで誰も歩いていない。愛別分岐に辿りつくと愛別岳の全容が見える。前回はガスがかかっていてよくわからなかったが、思ったよりも痩せ尾根だ。ザックをおいて出発、コルまで降りてくると、別な風が流れ込んでいるらしく、急に風向きが変わり、強風が吹きつけ身体がふらつき始める。もう少しなんだけどなと思いつつ、誰か他にアタックする人がいればと思い来た道を振り返るも誰もいない。午後にかけて風も強くなってくるらしいと前情報と、御年配が言っていた「風が強かったら戻ったほうがいいよ」の声を信じて戻ることに。丁度、分岐まで戻ったあたりで愛別岳に行くというおっちゃんと出会う。タイミング悪いよと思いつつ、今回は諦めて戻る。

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北鎮岳で休憩した後は、あの急斜面の雪渓を降りる気もしないので御鉢平を一周して帰ってくる。北海岳では神戸から来たN氏夫婦と出会う。銀泉台から黒岳・層雲峡への一周ルートを楽しんでいるらしい。ペースが似たりよったりで、たまに話をしながら降りていく。黒岳石室では管理人の後藤さんとエゾシマリスが出迎えてくれる。「もう一泊するかい?」と声をかけられるが、家の中が山道具で散らかった状態なのでやっぱり「降ります。ちょっと休憩させて下さい」と言って休憩していると、今度は管理人の清水さんがチャーハンの鍋片手に話掛けてくる。名刺交換して互いの情報を共有したり、山の話をしたりしている内に30分以上時間が経過。「お世話になりました」と声を掛けて下山する。

小屋を出ると黒岳への登りにの手前で、北海岳で出会ったN氏夫婦が何やら岩場を眺めて立ち止まっている。「この辺りにナキウサギいるんですか?」って聞かれて「いますよ~」と即答。鳴き声は聞こえるんだけど、ということで暫くナキウサギタイム。近くの岩場でチョコっと顔をだす。「ここまで出てくれば後は時間勝負ですね」と、言って見ているとギャラリーが増えていき、発見率がどんどんあがる。で、岩場の一番上にいるナキウサギを捉える。暫くじっとしていてくれたので、N氏も無事にビデオにも収められたようだ。「いますよ~」と回答した手前、見れてよかったとホッとする。

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その後もN氏夫婦とは着かず離れずのペースで、途中から元山岳ガイドのおっちゃんも加わって、花のことを聞いたりしながら降りていく。山岳ガイドのおっちゃんは途中からペースを上げて先に行ってしまった。7合目で私は脚が痛いからリフトで下りますと言って、5合目まで歩いて降りるN氏夫婦と別れる。

ロープウェー黒岳駅で、山岳ガイドのおっちゃんと再び合流して話をしていると、何やら見たことのある大きな人が近づいてくる。あれ?白雲小屋の管理人さんじゃないか。勤務シフトを終えて降りるようだ。偶然とはいえ良く合うなと管理人さんも驚いている様子。「十勝縦走したんですって?いいなぁ今度の休みに行ってみようなかなぁ」とロープウェーの中でも話をしなから下山して行った。

層雲峡で二人と別れた後は、黒岳の湯で汗を流す。駐車場に戻ってくると神戸ナンバーの車を発見...もしやと思って近づいてみるN氏夫婦だった。今、下山してきたところらしい。「お茶でもどうですか?」と言われて別に断る理由もないので「いいですよ」と答えて温泉街の一番手前にある喫茶店で話をする。明日は高原温泉沼巡り、明後日は旧士幌線のアーチ橋を見に行くと言っていた。毎年北海道に来ているそうで、車中泊で色々回っているんだそう。私の移住話や、私の知らない北海道の情報を色々と教えてもらったりしつつ、1時間ぐらいがあっと言う間に過ぎていた。その後、あこに戻ると急に眠くなってくる。まぁ、考えてみたら3時起きで山歩いてるんだから眠くもなるよね。そうは言っても今日は宿もとってないし帰るしかない。高速に乗ってからはあこもフラフラと頼りない動き。まぁ、そんなわけで、途中のパーキングでお菓子を食べたり、仮眠を取ったりして何とか無事に帰り着いたら時計は22時30分を差していた。


黒岳石室(3:40)→桂月岳(3:55←御来光撮影→4:45)→黒岳石室(5:00)
黒岳石室(6:25)→お鉢平展望台(7:00)→北鎮岳(7:55)→比布岳(8:45)→愛別岳分岐(8:55)→愛別岳のコル(9:14)→愛別岳分岐(9:45←休憩→10:00)→比布岳(10:10)→北鎮岳(11:05)→中岳(11:40)→中岳分岐(11:55←昼食→12:10)→間宮岳(12:25)→荒井岳(12:30)→松田岳(13:00)→北海岳(13:15)→黒岳石室(14:35←休憩→15:10)→黒岳(15:45)→黒岳7合目(17:00)→黒岳5合目(17:10)→層雲峡(17:30)

今回のあこの燃費:16.1km/L (本当です!)

黒岳通信(1日目) ~強風の黒岳と利尻富士の遠望~

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夏休み後半戦は、前半戦に熱中症気味で堪能できなかった黒岳石室を使ってのんびり山行を楽しもうということで、急遽計画。というわけで3日ぶりに層雲峡に戻ってきました。本日は天気が良くないので石室に行くだけ。層雲峡温泉街に昼前に到着し、いつもの登山軒でラーメンを食べた後、ロープウェーで5合目に上がる。ここで旭川から来た御年配から声を掛けられる。リフトに乗って7合目から一緒に登山開始。3日前に降りて来たばかりの道だし、特にこれといった光景もないが、自分達が標高を上げる度に、少しずつ雲が高くなっていく気がする。8合目では千歳から来たyah氏(http://yah55.exblog.jp)と出会う。ここからは三人の即席パーティで上がっていく。

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黒岳山頂は3日前と様変わりして強風とガスの海。写真からは伝わらないが風速15メートルを越える風が吹いている。私はここでアウターを着たが、yah氏は果敢にもそのままアタックしていった。で、やはり戻ってくる(^^;。少し下がるだけで相当風が強くなって寒いらしい。御年配はさすがというか頂上直下で着替えて登ってくる。進み始めると風の強いこと。突発的に来る強風にはストックで重心を低く構えて風をやり過ごし、弱まったら進んでいく。難所を越えれば幾分風も気にならないほどに...石室手前の雪渓で御年配がビールを冷やす氷を取りたいと言って、一緒にストックで掘ったりして雪をかき集める。

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で、石室にチェックインするなりビール買って宴会スタート。yah氏は酒が飲めないと言っていたが、一緒に話に加わる。他にも朝に石室に来て一日いたという関西のおっちゃんなどを交えて盛り上がる。そんな感じで3時間近くが経過して、ふと外を見ると晴れているっぽい。どれどれと三人で外に出て眺めていると桂月岳がくっきりと。私が「桂月岳登りませんか」と言うと他の二人も同意。で、夕食前に桂月岳に登ることに。登るとは言っても石室からなら近所の小山も同然で、あっというまに到着。カメラ片手に思い思いのポジションで写真を撮っている。

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みんな堪能したということで帰って夕食。食べおわって後片づけをしていると管理人の清水さんが、テント場から利尻富士が見えますよと声を掛けてくれる。どれどれと後片づけもそのままに見に行く。肉眼ではあまりよくわからないので、ズームをいっぱいにして撮影する。ああ、確かにピークが見える。しかし手持ちなので中々うまく撮影できない。ねばって何枚も撮影してようやく良いものが撮れる。時計を見たらもう19時20分。食事の後片づけをして寝床の準備をするとあっという間に消灯時間。そんな感じで一日目はすぐに過ぎていった。

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層雲峡温泉(12:00)→黒岳5合目(12:10)→黒岳7合目(12:30)→黒岳山頂(13:55)→黒岳石室(14:30) 黒岳石室(17:30)→桂月岳(17:45←写真撮影→18:10)→黒岳石室(18:20)

十勝岳連峰・大雪縦走期5日目 ~あこを迎えに美瑛まで~

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朝5:30起床。なんだか山の生活で早起きがすっかり板についてしまった。朝風呂につかって、朝食を食べた後、早めにチェックアウト。白金温泉の涸沢林道に置いてきたあこを迎えに行く。まずは道北バスで層雲峡から上川に、去年も言ったがここで乗り換えたほうが安くすむ。普通列車に揺られること1時間ちょっと。旭川駅に近づくと何やら富良野線が高架になっていることに気がつき、そのまま列車が駅に入線すると、「なんじゃこりゃぁ」、鉄骨を美しく組み合わせた近代的な駅になっている。もう急行宗谷が走っていた頃の面影はまるでない。いつの間にこんな立派なのができたんだろうと写真をとっておく。

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その後は富良野・美瑛ノロッコ1号で美瑛まで移動。接続が良かったのでこれにしたわけだが、テーブル席になっているのでお茶やお菓子を並べて食べながらの移動ができたのは嬉しかった。美瑛からはタクシーで涸沢林道に。乗車前に「いくらで行けますか?」聞いたら意外にも6,000円ぐらいとの回答が返ってくる。山岳代行業者に車を運んでもらったら20,000円を越えてしまうのに、昨日の温泉宿の宿泊費を入れてもお釣りがきてしまう。タクシーの運ちゃんは元自衛隊員で、上ホロカメットク山の300階段も自衛隊が整備したんだとか色々な山にまつわる裏話を教えてくれた。ゲートを開けてもらって涸沢林道に入り、駐車場まで500mほどのところでメーターが6,000円を越えるが「最初に言ってた金額でいいよ」とメーターを止めてくれる。何ともありがたい。

さすがに5日放置したから車上荒らし等が心配だったが、あこは全然無事で何食わぬ顔で
「あっ、帰ってきたんだ」的な感じ。下界はとにかく暑かったので、このあたりで遊んでから帰ろうとタクシーの運ちゃんに教えてもらった青い池に向かう。美瑛川の砂防施設に温泉成分を含んだ水が溜まって青白くなっているらしい。先にある美瑛川も青白い色をした水が流れていた。

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その後は更なる涼を求めて白金不動の滝に行ってみる。2段に別れた滝から水が勢いよく落ちてきて、風が吹く度にものすごく涼しい。滝を中心とした遊歩道の中には、昭和の初期に作った88ヶ所巡りもあったが、もうほとんど使われていないのか道が不明瞭。何故こんな場所に88ヶ所巡り作ったんだろうと思いつつ滝を後にする。

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その後はいつもの十勝岳温泉凌雲閣に向かう。白雲岳避難小屋で出会った横浜から来た夫婦が凌雲閣に新しい犬がいたと言っていたので見に行くが、カメラを向けた途端に警戒された挙げ句に吠えられた。こりゃ写真はだめだと先に温泉に入ることに。温泉では上海から来た親子連れと話をする。英語で話すのは随分と久しぶりだったけど以外と覚えているもんだ。中学生の子供達(双子)がポケモン好きで、今回の彼らの主目的はポケモンセンターでのショッピングだったらしい。父親のほうはと言うと、上海は結構ゴミゴミしているので、この景色はすばらしいと北海道を満喫しているようだった。風呂から上がると凌雲閣のおっちゃんに犬の名前を聞いてみる。ミルクとシナモン。おっちゃん曰くゴン太と違ってバカ犬で営業妨害だとグチグチ言っていたが、凌雲閣に犬がいないというのも寂しい話だし、これで良かったんじゃないかと思う。外に出て眠っているすきにすかさず2匹の写真を撮った。多分白いほうがミルクで、茶色いほうがシナモンなんだろう。

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5日間の長い旅もいよいよ終わりで、山行自体は辛かったが、なんだか色んな出会いが会って面白かったなと思いつつ帰路についた。

層雲峡(7:45)→上川(8:15): 道北バス \800
上川(8:28)→旭川(9:47): JR普通列車 \1410(美瑛までの乗車券)
旭川(9:55)→美瑛(10:24): JR富良野・美瑛ノロッコ1号自由席
美瑛(10:30)→白金温泉涸沢林道登山口(11:00): タクシー \6,000


今回のあこの燃費:12.5km/L (暑かったのもあってエアコンの使いすぎ?)

十勝岳連峰・大雪縦走期4日目 ~白雲岳避難小屋から黒岳・層雲峡温泉~

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朝4:30起床。写真を撮りに小屋の外にでる。筋肉痛で身体が痛い。天気はやや薄曇りだがそれでも今回歩いてきた山々が全部見える。忠別・五色・化雲・凡忠別と一周するループが大きな噴火口のようで、もしこれが爆裂火口の跡なんだとしたら、かつては4000m級の山があったかもしれないなどと想像してみる。小屋の周囲を散策していて、よくよく思えば避難小屋もペンキを塗りなおしたばかりでピカピカだったので写真に収めておく。

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この3日間、よく眠れてはいるが長い旅も今日で終わりと思うと、気が抜けてしまいダラダラと朝食を取って準備をする。管理人さんに挨拶して、避難小屋出発は7時過ぎ。小屋のクモイリンドウは一輪だけ咲いている。一緒に泊った女性が10時ぐらいには全部が開くと言っていた。小屋の周囲はトカチフウロやダイセツトリカブトが見頃、チングルマは綿毛になっている。ゆっくりと登っていると後から出発した夫婦に追い越されてしまう。でも体力的にはこれがMAXスピード、花などの写真を撮りながら行っているから尚更遅い。白雲分岐に着くと、銀泉台に降りる夫婦に手を降って別れる。

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あとはひたすらゆっくり進む。北海岳から黒岳の間は雪が遅くまで残っているため、結構花が楽しめる。見頃はチシマクモマグサで、コマクサやイワブクロなども見られる。チングルマの綿毛も奇麗で、思わず風景をバックに写真を取ってしまった。北海沢への下りで白雲小屋の管理人さんとバッタリ出会う。子連で来ると聞いていたが明日から天気が崩れるので一人で来たらしい。少し立ち話をして「紅葉時期にまた行きます」と約束をして別れる。

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当初はのんびりと山を楽しみながら降りて、黒岳石室でお疲れさんのビールを飲もうという計画だったが、長旅の疲れと容赦ない日差しのため、北海沢に降りた辺りから熱中症気味になってきて気持ちが悪い。石室に辿りついた後もビールどころではなくて、日陰で冷たいポカリで首もとを冷やしつつ何とか凌いでいる状態。日陰にいると幾分楽だが、太陽の下に出るとフラっとする。管理人の後藤さんに、例によって「泊ってくかい?」と声をかけられるが、層雲峡に宿も取ってるし、明日の天気も悪そうなので降りると言って、しばらく昼食をとりつつ、山の話をしたりしながら、日陰で休んでいると大分気持ち悪いのが治まってきた。太陽が雲に隠れた瞬間を狙って名残惜しいが石室を出発。黒岳のピークを越えて反対側にでるとガスがかかって太陽を遮ってくれる。これはありがたい。リフト乗り場に着いたらエゾシマリスが出迎えてくれた。

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宿泊先の銀泉閣では、風呂に入って、待望の美味しい食事とビール。和風懐石とバイキングの組み合わせで、驚いたことに飲み放題もついている。それで10,000円なのだから何とリーズナブルなこと。結局、4杯ちかくもビールを飲んでフラフラになりながら部屋に戻り、軟らかい布団で眠りについた。


白雲岳避難小屋(7:10)→白雲分岐(8:00)→北海岳(9:20)→黒岳石室(11:35←昼食→12:10)→黒岳(12:40)→黒岳七号目リフト(14:05)→黒岳五号目ロープウェー駅(14:45)→層雲峡温泉(15:15)

十勝岳連峰・大雪縦走期3日目 ~南沼キャンプ指定地から白雲岳避難小屋~

翌朝4時30分起床、青空が拡がっている。今日の予定は全くの白紙。幸い天気も良いということで、とりあえず化雲岳まで行くことにする。トイレブースのそばにテントを張っていたおっちゃんと暫く話をして、6時30分に出発。今回はトムラウシ山は登らずに北沼のエスケープルートを通っていく。このルートは花と沼と雪渓が合わさって、ものすごくきれい景色が堪能できる。殆どの人はトムラウシのピストンで満足して帰ってしまうが、北沼を経由して一周しても1時間も掛からないのでお薦めだ。北沼の南にある雪渓が構成する名もなき沼の水面には、北沼からロックガーデンに抜けるピークがきれいに映り込んでいた。

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北沼にもトムラウシ山が映り込んでいたが、登山ルート上からは全部が奇麗に水面に収まるポイントがない。北沼からピークを越えるとロックガーデンが眼下に拡がる。その名の通り一面の巨岩帯。噂には聞いていたが、これほど広大とは思わなかった。ナキウサギも時折顔を出して動き回っている。ここで昨日隣のテントにいた広島の彼が追い付いてきた。彼は南沼でもう一泊。今日は化雲岳まで行ってトムラウシ山の全体を写真におさめたいと言っていた。そんなわけで彼と化雲まで即席パーティを結成。ロックガーデンからはお互い幾度もルートを見失いながら進んでいく。晴れててもこんなにルートを間違うんだから、ガスったらとんでもないことになりそうだ。ようやくロックガーデンを抜けたら、天沼があまりにきれいだったので、ここでしばらく休憩にする。イワイチョウの白い花が奇麗に咲いている。時折、雪渓の氷が割れて水に落ち、水面に波紋を形成する。穏やかな大雪に心から癒される。

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更に進むと右手にヒサゴ沼が見えてきた。ヒサゴ沼は良いところだが、稜線から標高を200mぐらい下げるのと、人気の山小屋でいつも満杯のため敬遠していたが、来年にでも季節をずらして行ってみたくなる。化雲岳の山頂に着くとトムラウシ方面は雲が出てきたが白雲岳方面は良好。ここで電話して層雲峡の温泉宿が取れれば、白雲岳避難小屋にもう一泊して層雲峡に行くルートにしようと決め、電話をするとあっさり取れてしまう。時間が少し早いが、お腹が空いたので少しだけ食事をして、広島の彼と別れて出発する。化雲平のチングルマはほぼ終了でエゾカンゾウやリシリリンドウなどが見られる。昨日の誰とも会わないような状況が一変して、高根ヶ原のまでの区間では結構な人数とすれ違う。みんな夏休みということで思い思いのルートで山を楽しんでいるようだ。

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高根ヶ原の中間あたりからは脚が重くなってきて急速にペースが落ち始める。昨日の疲労が効いているらしい。まぁ、それでも「昨日の辛さを思えば楽勝だ」と言い聞かせて進んでいく。白雲岳避難小屋の近くの雪渓の水で頭と顔を洗う。しょっぱい水が目に入ってしみる。よほど汗がたまっていたらしい。石鹸なしとは言えサッパリして、残り200mの道程を歩く。最後は道を覆い隠すハイマツにすらてこずって進めないほど疲弊していたが何とか到着。小屋は私も含めて5パーティ。今日はとても空いている。白雲岳避難小屋は管理人さんが二人いて、今回は小さい方の管理人さんだ(名前がわからないので便宜上大小で呼んでいる)。前回お世話になった大きい方の管理人さんは明日上がってくるらしい。途中で会えたらいいなと思いつつ、2Fの階段傍に陣取ると、山の情報を交換したり、水や食事を用意したりであっと言う間に日が暮れていく。五色岳の稜線の奥には発達した積乱雲、忠別岳の上空にはガスがどんどん高く伸びていき、奇麗な夕暮れの景色を演出していた。

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夜は何故か21時過ぎに目覚める。準備をして外へ。今日も南の空は月が明るい。北側の小泉岳の稜線上は星でいっぱいだ。何枚も写真を撮り続ける。暗くてファインダーに何が映っているのかわからないので撮ってみてのお楽しみ。写真にすると肉眼では見えなかった情報も見えてくる。高根ヶ原の平ヶ岳よりの向こう側は雲に覆われているようだ。但し、低い雲。どうやら明日もいい天気になりそうだ。

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南沼キャンプ指定地(6:30)→北沼分岐(7:05)→天沼(8:30)→ヒサゴのコル(9:05)→化雲岳(9:55)→五色岳(11:00)→忠別岳避難小屋分岐(11:35)→忠別岳(12:35)→忠別沼(13:10)→三笠新道高根ヶ原分岐(14:50)→白雲岳避難小屋(16:10)

十勝岳連峰・大雪縦走期2日目 ~美瑛富士避難小屋から南沼キャンプ指定地~

朝、4時起床。天候不純。重い気持ちで朝食を取りつつ、オプタテシケ山までは行くことに決める。あきらめが悪いが、運良く晴れて縦走が続けられる可能性を信じて重い荷物を背負っていく。他の二人は美瑛岳と美瑛富士に、御年配はオプタテシケ山ということで各々出発する。私以外は小屋にデポして身軽な状態。小屋の外は相変わらずガスが掛かりドンヨリとした空気。朝露に濡れたハイマツを掻き分け、足取り重く進んでいく。すぐの岩場でナキウサギの観察などしながら、ゆっくりと登って行こうとするがナキウサギにも嫌われたよう殆ど姿を捉えられない。こんな視界の悪い中、重い荷物背負って何やってるんだろうと思った矢先、スーっと晴れ間が見え始める。奇跡到来。みるみるうちに美瑛富士と美瑛岳が顔をのぞかせる。「やったぁ」、ここまで遅かったペースが一気に早くなる。身体は縦走する気満々だ。こうなったらオプタテシケを8時30分には通過したい。同じペースで登っていた御年配を申し訳なく思いつつ一気に離して進んでいく。晴れたのは良いが今度は急速に気温が上昇。日差しはギンギン。ハイマツ漕ぎで濡れた服も一気に乾いてしまった。ベベツ岳を過ぎた岩場で着替えようとザックを降ろした時に、ジーっと物思いにふけっているようなナキウサギを発見。こういう瞬間があるから山はやめられない。ありがとうとお礼を言って当面の目標のオプタテシケ山を目指す。

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少し遅れたが8時15分にオプタテシケ到着。これから行く稜線を眺める。無数のピークを貫いて一本の道がトムラウシまで続いている。ここに立って眺めているだけで心が折れそうになる。昨晩、小屋で出会った人達に縦走することを話したら「オプタテから先は覚悟を決めないと行けないからね」と言っていたが本当にそうだ。自分の脚でこの距離が歩けるのか急に不安になるが信じて行くしかない。

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休憩の後、進み始めるといきなりの痩せ尾根、片側は崩落していて落ちたら間違いなく天国に行けそうだ。地図では標高差700mはあるものの、ジグを切りながらを降りていくため、それほどの困難は予測してなかったが、痩せ尾根を越えると巨岩帯が拡がっていて結構体力を消耗する。おまけに、途中で脚をすべらせて足首をひねってしまう。幸い、登山靴のサポートで普通に歩く分には問題ないがひねると痛い。猛暑で水も随分となくなってきた。昨日、水場で汲まなかったのが効いている。何とか700mの下りを降りきったあたりで、ほんのわずかに残った雪渓から水を取る。あと数日で涸れそうな状態なので本当にラッキーだった。煮沸している時間がないのでフィルターで濾して飲料水として確保。ここで、今朝、南沼を出発して来たという青年に出会う。お互いの走破時間を交換して、何とか16時ぐらいに南沼キャンプ指定地に着けそうな感触を得る。途中の三川台で泊まるのもいいだろうと。振り返ると降りてきたオプタテシケ山がドーンとそびえ立っている。オプタテシケ山がこんなに奇麗に見える場所はここしかないだろうなぁと感動してしばらく眺めていた。

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さてオプタテシケ山を降りた段階で、標高は1400mまで下がった。ここからは標高1500~1600m台の無数のピークを登ったり降りたりして進んでいく。最終的には標高1700mの三川台、そして1970mの南沼キャンプ指定地が目標だ。道はハイマツと熊笹のブッシュで時折、ダケカンバがクネクネと曲がって立っている。湿度は限りなく100%に近く、気温も29℃。不快指数はMAXに到達する。予測に反して水の減る速度が速い。もはや水を飲んでも汗が蒸発しないわけだから、意味はないはずだが喉の渇きが止まらない。照りつける日差しに体力も奪われていく。涼しい風でも吹いてくれれば、どうということはない標高差の緩い登りが続いていくが、休み休みのためペースは全然上がらない。これはまずい。約18kmの行程の内、まだ1/3ほどしか来ていないのにと気持ちがあせり始める。地図で残り距離を確認しながら目標到達時刻を計算しつつ進んでいく。このペースでは16時に三川台がギリギリかもしれない。

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コスマヌプリを越えると比較的勾配がゆるやかになり、少しペースが回復する。それでも30分動いて休憩を繰り替えさないと熱中症になりそうだ。幸いハイマツのブッシュが続いているため日陰を探すのは容易。もう半径6km圏内には誰一人いない。慎重にいかないと本当にヤバイ。トムラウシ山の南には巨大な積乱雲が発達し始めて時折落雷の音が聞こえる。ラジオは新得から鹿追・上士幌までの大雨洪水警報と落雷注意報を伝えている。あの雲がこっち来るとマズいなと思いながらも、照付ける太陽を恨めしく見上げながら少しは曇って欲しいと矛盾する考えを抱く。休憩を挟みつつもペースは良好で時速1.5~2km/hをキープしている。あれほど遠かった三川台の台地もすぐ近くに見えてきて、気がついたらツリガネ山を通り過ぎて最後の1580mピークに到達していた。この時点で三川台に15時、南沼16時も可能かもしれないと希望が出てくる。脚は疲労で重いが気分的には先が見えて晴れやかだ。1500mのコルに降りて最後の登りに取り掛かる。ハイマツのブッシュの中、ついに最後の水を飲み干してしまう。あとはポットのお湯が残っているだけ。渾身の力で三川台へと続く急坂を上がる。

三川台では、水が涸れているためか今日は誰もテントを張っていない。下には雪渓と沼地が拡がっていて、とても奇麗なのだが、すぐそこに水があるのに何で手に入らないんだろうという考えが先行する。三川台からは片側が切り立った崖なので、疲れた脚がもつれないよう気をつけて進んでいく。見覚えのあるトムラウシ山周辺の景色が見えてくると一緒に人の姿も確認した。キャンプ地から散策に降りてきたらしい。今日は朝から誰にも会っていないので、人が傍にいるって本当に安心する。一言二言会話をするが喉が乾いているせいか、声がかすれてうまく出せない。

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南沼キャンプ指定地には念願の水が大量にあった。雪渓も例年より随分と残っている。いっぱい使いたいのでテントは水場のすぐ横にした。早速、水を取りにいく。汁物中心に食事をしてようやく落ち着いた頃にはもう日が傾いている。体力もだいぶ回復して、テントの周囲で写真を撮ったり、お酒を飲んだりしつつ、広島から来たという隣のテントの人と話をする。中々に辛い一日だったけど、終わりよければすべて良しで、すべて帳消しになってしまった。一旦、眠ったあとは空を見上げる。一片の曇りもない星空。南の空には月、北の空には北斗七星とカシオペアが明日進むべき道を示していた。


美瑛富士避難小屋(5:50)→石垣山(6:45)→ベベツ岳(7:00)→オプタテシケ山(8:15)→双子池キャンプ指定地(9:55)→1668mピーク(11:00)→コスマヌプリ(11:25)→1558mピーク(12:20)→ツリガネ山付近1580m(13:35)→三川台(14:55)→南沼キャンプ指定地(16:30)

十勝岳連峰・大雪縦走期1日目 ~白金温泉涸沢林道から美瑛富士避難小屋~

夏休みを利用して、毎年、悪天候で中止を余儀なくされた3年越しの十勝岳連峰縦走にチャレンジ。本当は望岳台から十勝岳を越えて行きたかったが、前日の熱中症気味の仕事疲れが抜けなくて白金温泉涸沢林道の美瑛富士登山口からスタートする。林道ゲートを通って、一番奥の駐車場に着くと車は四台ほどで空いている。あこもここで四泊するので状態の良さそうな場所を選んで駐車。

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このコースは森の中を延々と進んだ後はトラバースが連続する味気ないコース。一緒に出発した御年配とゆっくりと登って行く。照りつけるような日差しに暑さを感じていたら、雨が降ってきた。山頂は雲が発達して雷がゴロゴロ言っている。文字どおり嫌な雲行きだ。とはいえ樹林帯では木が傘代わりになって殆ど濡れなかったが、やがて樹林帯が途切れ始めると雨具を着るしかない。ブッシュの中では湿度も100%近くゴアテックスも効果がない。不快指数が極めて高いので、雨の状態を見ながら雨具を脱いだり着たりを繰り返して登っていく。

十勝岳連峰は7月を過ぎると水の確保に苦労する山で、途中の水場で水を汲もうか迷うが、小屋の直下にも雪渓があったはずで、一昨年は同時期に水が取れたから上で汲もうということに決め進むとなんと涸れている。「しまったぁ」と思いつつも「3L近く残ってるので何とかなるだろう」と、あまり気にしなかったが、後程、水の確保に苦労することになる。

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美瑛富士避難小屋には先客が二人。彼らは同じ涸沢林道を早朝に出発、オプタテシケ山まで往復して今日は小屋で一泊のようだ。オプタテ山頂は霧で何も見えず、ベベツ岳あたりで落雷にあって恐い目にあったと話していた。小屋の外は相変わらずのガスの海。夕食を取った後、ラジオの気象情報に耳を傾ける。明日は高気圧の圏内だが、台風の湿った空気の影響で大気の状態が不安定だと伝えている。特に2000m級の山々が連なるような地域は雲が発達しやすいだけに「これは今年もダメかなぁ」と溜め息を一つついて、気分的には殆ど明日山を降りるつもりで就寝した。

白金温泉涸沢林道登山口(12:10)→天然庭園(14:10)→美瑛富士避難小屋(16:20)